外科

基本方針・理念

  1. 群馬県東毛地区に密着した地域の病院として、消化器疾患を幅広く診療いたします。
  2. 患者さんとのインフォームドコンセント(説明と同意)、術後のQOLなどを重視していきます。
  3. 地域の他の高度医療機関とも交流をはかり、群馬大学医学部、獨協大学医学部、群馬県立がんセンター、太田記念病院、国立がんセンターなどと連携して診療を行います。
  4. 外科症例はすべてNCD(社団法人)に登録し、データベースで管理を行っています。
  5. がんの治療を含め、各疾患ごとのガイドラインに沿った治療を行うことを原則としながら、患者さんごとに適した低侵襲で安全な治療の組み立てを行います。

診療内容

オペシーン

手術に直接携わる常勤医師は3名(日本外科学会指導医・専門医、日本消化器外科学会指導医・専門医、日本内視鏡外科学会技術認定医)、そのほか非常勤医師2名、後方支援を行うベテラン常勤医師2名の計7名で診療に当たります。

当院の特色として、大腸・直腸領域、上部消化管・減量手術、肛門・痔の領域、救急診療にそれぞれのエキスパートがおり、より専門的な診療と治療を皆様に提供できるような態勢を整えております。
また最新の腹腔鏡(ふくくうきょう)手術設備を備えており、4K画像、3D画像をはじめ遠赤外線を用いた術中臓器血流評価も可能であり、電気メス、超音波メスなどを含め国内先進医療施設と同等の手術品質を提供することが可能です。

これらを腹腔鏡手術に精通した内視鏡技術認定医が中心となり行うことで低侵襲かつ安全で繊細な手術を提供できるよう努めてまいります。
肛門に近い直腸がんに対して永久人工肛門を作らない「肛門温存手術」を積極的に行っており、最新の手術方法である「taTME(ティーエーティーエムイー手術)」 を行っている県内でも数少ない病院です。

手術件数も増加傾向であり、2020年度に216件だった手術件数ですが、2022年度には338件で、毎年 前年度を超える件数で推移しており、今年度は更に増える見込みとなっております。今後も皆さまに選ばれる病院を目指して一層努力を行っていきます。

診療対象疾患と治療内容

  1. 悪性疾患(大腸がん・胃がん・肝臓がん・胆道領域の癌等)に対する手術、および化学療法
  2. 良性疾患(胆石・ヘルニア・肛門、痔疾患、急性腹症等)に対する手術治療
  3. 合併症をもつ高度な肥満患者さんに対する減量手術(施設基準獲得!)

手術についての取り組み

大腸がんに対する腹腔鏡手術

最新のがん統計から、大腸がんは日本で最も罹患率の高いがんであります。大腸がんといっても患者さん一人ひとり性質や進行度は異なり、必要となる治療が異なります。
当院では国立がん研究センター東病院で中心的役割を担った大腸がんのエキスパートを中心に外科手術、術前術後の化学療法、緩和医療を行っております。

  腹腔鏡下手術について

腹腔鏡手術では通常5㎜~1㎝程度の傷を、おなかに4~5か所ほどつけて、そこにトロッカーと呼ばれる筒を挿入します。
筒から炭酸ガスを用いて腹腔内を膨らませた上で、腹腔鏡と呼ばれる細長いカメラを挿入し、モニターを通して手術を行います。最後に切除した臓器を取り出すための最小限の傷をおへそ周囲につけます。

従来の開腹手術ではおなかの中心に15~20㎝程度の傷をつけることになりますが、腹腔鏡手術では傷が小さく目立ちにくい、術後の痛みも軽減される等の多くのメリットがあります。
がんの根治性については腹腔鏡手術と従来の開腹手術において遜色のないことが証明されていますが、がんの進行具合によっては最初から開腹手術をお勧めする場合があります。

直腸がんに対する肛門温存手術、および taTME手術

大腸がんの中でも肛門に近い部分のがんを直腸がんといいます。
従来の手術では肛門にごく近い直腸がんに対して自然肛門(もともとの肛門)を温存できず、永久人工肛門となる症例が数多くありました。
がんという疾患を抱えながらなおかつ人工肛門で生活することへの精神的負担は大きく、古くから肛門温存手術は注目を集めていました。それでも技術的な問題を中心に肛門温存手術の普及はいまだ限定的です。それは骨盤という狭い空間の中で、根治性(がんを直す力)や周囲の神経・臓器への影響、出血、術後の合併症に注意しながら、がんを適切に切除すること自体が難しく、その中で肛門温存までを行うためには十分な知識と経験が必要となるためです。

当院では、直腸手術に対する経験豊富な大腸骨盤外科領域の専門医を中心に、積極的に肛門温存手術を行っております。
早期の直腸がんであれば、肛門に非常に近いがんであっても肛門温存手術が可能です。当院では早期がんに対しては直腸を温存する局所切除にも力を入れております。進行直腸がんであっても肛門管(括約筋で普段締まっている部分)よりも奥に腫瘍がある場合は肛門温存手術の適応となることが多いです。
一方で肛門が温存された場合でも頻便や便失禁などで術後悩まれることがあり、患者さんの体力やがんの進行具合、手術前の治療(放射線治療など)によっても温存できるかどうかの判断が変わりますので担当医までご相談ください。

  taTME手術(ティーエーティエムイー手術)について

直腸がんに対しておなか側とおしり側の両方から腹腔鏡を用いて手術を行う「taTME手術(ティーエーティーエムイー手術)」を行っています。
通常のおなか側からの操作だけでは直腸は遠い位置にあり、また狭い空間であるため操作が制限される場所であります。一方でおしり側から見れば直腸の腫瘍は非常に近い位置にあり、腫瘍を良好な視野で観察しながら切除を行うことが可能です。

この手術では小腸に一時的な人工肛門を作成し、数か月後に人工肛門を閉鎖してからご自身の肛門を使い始めるのが一般的です。

taTME手術
会陰、腹腔側から5人の医師により同時に手術を行うことも可能です
これにより圧倒的な手術時間短縮につながります

胃がんに対する腹腔鏡手術

当院では胃カメラで治療できない早期胃がんや進行胃がんに対して幽門側胃切除や胃全摘などの手術を行っています。
早期がんのほぼすべての患者さんに、進行がんでも約半数の患者さんに対して腹腔鏡手術を行っております。腹腔鏡下胃手術のみならず開腹胃手術についても十分に経験をつんだ医師により施行されておりますので担当医までご相談ください。
リンパ節転移が多くあるものや審査腹腔鏡で腹水細胞診が陽性であるような進行胃がんに対する術前化学療法についても積極的に行っています。

高度肥満、糖尿病治療に対する減量手術

当院は全国に先駆けて2002年より高度肥満患者さんに対する減量手術(腹腔鏡下胃バイパス手術、スリーブ状胃切除術)を行ってきた国内の減量手術のパイオニアです。

その後担当医の異動に伴い減量手術を行っていませんでしたが、当時手術を担当し、現在でも日本国内でトップレベルの執刀件数を誇る医師が非常勤医師として赴任しており手術に加わっております。
減量手術再開後の実績は多くありませんが、手術のクオリティは高く現在まですべての患者様で満足する減量が得られております。
糖尿病のお薬が不要になったり、リバウンドがしにくいといった点もこの治療の特徴です。

肥満に糖尿病や睡眠時無呼吸症候群などの生活習慣病を合併したり、そのリスクが高い場合、肥満症と診断されます。肥満や併存症に対する薬物治療や、食事や運動を中心とした生活指導にて状況が改善しない場合、減量手術の適応となります。

国内では2014年に腹腔鏡下スリーブ状胃切除が保険適応となり普及してきておりますが、いまだ行える施設は限定的です。手術適応がある全ての患者さんが対象にはなりませんが、肥満症でお困りの方は担当医までご相談ください。

術後体重の推移(当院実績)

手術を受けた方全員が体重減少し目標体重に近づいています。

術後体重の推移
肥満手術(腹腔鏡下スリーブ状胃切除術)の手術適応(保険適応基準より要約)
  • BMIが35以上の患者さんで、6か月以上の内科的治療に抵抗性の糖尿病、高血圧、脂質異常、睡眠時無呼吸症候群の1つ以上を合併している
  • BMI32.5~34.9かつHbA1cが8.4%以上の糖尿病患者さんであって、6か月以上の内科治療に抵抗する比較的深刻な高血圧症、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群の1つ以上を合併している
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術

痔・肛門疾患

ひとくちに痔といっても様々な種類があり、それぞれに対しての治療は異なります。
日本全国で肛門診療を専門に行っている医師は少なく、その数少ない専門医による診療・治療を当院では行っております。

例えば内痔核に対し、ジオン(ALTA、内痔核硬化剤)注という薬を肛門に注射(四段階注射法)するという治療を行うことのできる施設は限られております。
当院では経験豊富な専門医によりこれらの専門的な治療を行っております。痔や肛門疾患でお悩みの方はぜひ当院までご相談ください。

胆石、そけいヘルニア、急性虫垂炎に対する腹腔鏡下手術

食後の急な上腹部痛で診断される胆石症や胆嚢炎、小児や高齢者の足の付け根が膨らんでくるそけいヘルニア、心窩部痛で発症し徐々に右下腹部に痛みが移動する急性虫垂炎は日常の消化器外科診察で目にすることのもっとも多い疾患群です。

当院ではそけいヘルニアに対して腹腔鏡下ヘルニア修復術(TAPP法)を行っております。
複数の出所を持つヘルニアの修復に有利であり、術後の神経疼痛も発生を抑えるなどのメリットがあります。また胆嚢炎に対しては早期の手術を行うことが推奨されたており、当院でも一定の基準を満たす患者さんには発症後早期の腹腔鏡手術を行っております。また急性虫垂炎も含め、これらの良性疾患に対する単孔式手術も行うことが可能ですのでご興味のある方は担当医にご相談ください。

  単孔式手術

単孔式手術とは腹部に小さな穴を1ヶ所だけ切開して行う手術です。
その1ヶ所を、おへそのくぼみに開け、その穴から器具を腹腔内に挿入して手術を行います。

手術中
術中
おへその小さな傷より3つの道具を腹腔内に挿入し手術操作を行います。
手術直後
術後
手術後は、傷はおへそに隠れ目立ちません。
手術後1か月

傷はおへそに隠れています。半年ほどで皮膚の腫れが引き目立たない傷になります。

術後1月

手術後1か月の傷跡



担当医

外科・消化器外科

外科部長佐々木 剛志

Takeshi Sasaki

前職 :
国立がん研究センター東病院大腸外科 医長
  • 医学博士
  • 日本外科学会 専門医・指導医
  • 日本消化器外科学会 専門医・指導医
  • 日本内視鏡外科学会 技術認定医
  • 消化器がん外科治療 認定医
  • 緩和ケア研修 修了
  • 日本大腸肛門病 所属

外科・消化器外科

消化器外科部長髙良 大介

Daisuke Takara

前職 : 桐生厚生病院外科
  • 日本外科学会 専門医
  • 日本消化器外科学会 専門医・指導医
  • 日本DMAT隊員
  • 統括DMAT
  • DMATインストラクター

外科・消化器外科

医員本多 良哉

Ryoya Honda

前職 :
国立がん研究センター東病院大腸外科レジデント
  • 日本外科学会 専門医
  • 日本内視鏡外科学会 技術認定医
  • 緩和ケア研修 修了

外科・消化器外科

理事長・院長堀江 健司

Kenji Horie

  • 日本消化器病学会 専門医
  • 日本消化器内視鏡学会 専門医
  • 日本臨床外科医学会 評議員
  • 日本外科学会 認定登録医
  • 日本医師会 認定産業医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医

外科・消化器内科

副院長竹束 正二郎

Shojiro Taketsuka

  • 日本外科学会 専門医・指導医
  • 日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医
  • 日本消化器外科学会認定医
  • マンモグラフィー読影認定医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医

外科・消化器内科

非常勤医笠間 和典

Kazunori Kasama

常勤先 :
四谷メディカルキューブ減量・糖尿病外科センター長

肛門外科

非常勤医笹口 政利

Masatoshi Sasaguchi

常勤先 : 千代田医院